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信用保証委託契約書上の保証人以外に連帯保証人を自由にとってよいか

顧客A社に対し保証付融資800万円を貸付しようとしたところ、A社の代表取締役甲野氏を連帯保証人に徴求する保証条件が付してあった。金融機関のA社に対するプロパー貸付では、通常甲野氏のほか、常務取締役の乙野氏も連帯保証人に加えることが慣習であった。貸付実行にあたって乙野氏を連帯保証人として徴求してよいか。

「信用保証書」記載の保証条件どおりの貸付実行をもって足りる。
「信用保証書」の交付は保証契約の成立であって、その記載内容と合致した貸付実行が行われて保証契約は効力を発生する。したがって、保証条件に示された連帯保証人は貸付実行にあたって必ず徴求する必要があるが、その他の連帯保証人を徴求するかどうかは、金融機関の通常の事務処理に委ねられている。

金融機関の通常の事務処理に委ねられている
信用保証委託契約書の連帯保証人と、貸金上の連帯保証人とは、その保証すべき債務の内容を異にする。信用保証委託契約書上の連帯保証人は、「信用保証協会が代位弁済した金額全額および代位弁済後の損害金その他避けることのできなかった費用」等のほか信用保証料等の債務を委託者(債務者)と連帯して履行する責を負っている(委託契約書例13条1項)。他方、貸金上の連帯保証人とは、金融機関が貸付実行する際に当該貸金の連帯保証人として徴求するべく定められたものである。

信用保証協会の保証は民法上の保証であるとされていることから、信用保証協会が代位弁済により求償権を取得した場合、債務者は当然に全額求償債務を負担するが、貸金上の連帯保証人は信用保証協会との関係においては、共同保証の関係に立つ連帯保証人であって、この者に対する信用保証協会からの求償権の履行請求に対しては、連帯保証人の頭数の割合の範囲でのみ履行の責を負うにすぎない(民法465条1項)。このため、信用保証協会は委託契約書例13条4項1号により「信用保証協会が6条1項の弁済(保証債務の履行)をしたときは、連帯保証人は信用保証協会に対して7条の求償権全額を償還する」と特約し、民法465条1項の規定を排除している。

したがって、信用保証協会の保証条件に示されている連帯保証人は保証委託契約上にも当然に連帯保証人として加入しているので、負担部分の適用を放棄し全額求償債務の履行を負うこととなっている。反対に、金融機関の他の貸金を共同保証の関係に立つ他の連帯保証人が弁済によって消滅させた場合、その連帯保証人は信用保証協会に対して、同じ連帯保証人の立場として、民法465条1項により負担部分の割合に応じた履行請求が可能となる。しかし、先に述べたとおり信用保証協会はその連帯保証人との間において信用保証委託契約書例13条4項3号の「保証人が金融機関に対する自己の保証債務を弁済したときは、保証人は信用保証協会に対し何らの求償をしない」と特約し、連帯保証人からの民法465条1項の主張を排除している。

次に保証条件外の連帯保証人であるが、この連帯保証人は、委託契約に加入していないため、信用保証協会との間では民法465条1項の規定を排除する特約を結んでいない。したがって、信用保証協会が代位弁済後条件外の連帯保証人に請求する場合は、当然に頭数の割合の制限を受ける。逆に条件外の連帯保証人が金融機関に代位弁済した場合は、信用保証協会に対して頭数の割合の範囲で履行請求をしてくることも考えられる(実際には、この種の問題は起こっていないが法律論としては起こりうる)。このような場合を考慮して実務の取扱いとしては次のようにしている。

①金融機関が保証条件外の保証人を貸金債務の連帯保証人として追加した場合は、信用保証委託契約書にもその連帯保証人の追加を求める(ただし、後述の第三者保証人の例外に該当する場合に限る)。

②万一、条件外の連帯保証人が主債務者に代って債務の全額または一部を支払うときは、金融機関はあらかじめ信用保証協会の保証を免除のうえ保証債務の履行を受けるか、もしくは民法465条1項の権利行使を放棄させる特約を徴求した後、当該金融機関がその条件外の連帯保証人より保証債務の履行を受けるよう金融機関に協力を願っている。

なお、信用保証協会では、平成17年6月20日に報告された中小企業政策審議会基本政策部会の指摘を受けて、信用補完制度の基本理念に立ち返り、平成18年4月1日以降の保証申込受付分からは、以下に該当する場合を除いて第三者保証人を原則非徴求としている。

①実質的な経営権を有している者、営業許可名義人または経営者本人の配偶者(当該経営者本人と共に当該事業に従事する配偶者に限る)が連帯保証人となる場合

②経営者本人の健康上の理由のため、事業承継予定者が連帯保証人になる場合

③財務内容その他の経営の状況を総合的に判断して、通常考えられる保証のリスク許容額を超える保証依頼がある場合であって、当該事業の協力者や支援者から積極的に連帯保証の申出があった場合