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抵当権設定が保証条件の場合、登記前の実行はできるか

A社は事務所に抵当権を設定することを条件に1,000万円の保証承諾を得たが、社長が商用で10日間ほど旅行をするため、その前に貸出の実行をしたいとの申出を受けた。抵当権設定登記前に貸付実行はできるか。また、火災保険の質権設定手続が完了していない状態で貸付実行はできるか。

原則として抵当権設定登記後に貸金を債務者に交付する。
実務上は、登記前貸付実行と登記後貸付実行とがある。貸付契約、抵当権および火災保険の質権設定契約を行い貸付実行し、先方の了解を得たうえで、貸付金は別段預金等に一時留保しておく。抵当権設定登記と火災保険の質権設定手続(確定日付の徴求を含む)完了後、A社の預金口座へ別段預金から振替える等の方法がある。

別段預金に一時留保
(1)登記事項の確認
まず登記された抵当権の内容が、保証条件どおりのものであるかどうかを登記事項証明書により確認する。例えば、物件は相違してないか(規模、構造)、名義人の相違はないか(個人、法人)、担保の順位、さらに権利を阻害する第三者の付着はないか等である。次に火災保険の付保を要する物件については確定日付の徴求まで点検し、担保に取得した不動産が保証条件に一致していることを確認する。

(2)担保権設定登記後、貸付実行する場合
借入資金を使用するまで時間的余裕があるときは、抵当権設定登記が完了した後に貸付実行を行うこととなるが、この場合、貸付契約日と貸付実行日が異なるので、当該貸付契約に基づく借入金である旨を明示した領収証を債務者から徴求しておくといった対応が考えられる。

(3)担保保存義務
貸付実行が保証条件である担保不動産の登記前または登記後に行われようとも、保証条件どおりでかつ遺漏のない担保権を取得した段階で、貸付代り金を解放することに変わりはない。一方、担保不動産について金融機関は善良な管理者として担保保存義務を負うので、これを怠ると保証免責の原因になるから次の点に留意する。

①担保不動産を適正に評価し、万一著しく減価するおそれのある場合は、信用保証協会に連絡して処理する

②支払請求権に質権設定済の火災保険については期日管理を行い、特に倒産後に期日が到来した時には、場合によって金融機関で保険料を立替えても保険を継続しておかなければならない。