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保証付貸付申込のつど債務者・連帯保証人の資格証明と印鑑証明は必要か

金融機関の貸付担当者甲野氏は、株式会社A社に対し保証付融資を実行するにあたり平成22年11月10日に代表者乙野氏との間で金銭消費貸借契約証書を作成し同日貸付実行した。数日して丙野氏より11月6日をもってA社の代表者への就任の申出と同時に11月7日付けで役員の変更登記を完了した登記事項証明書の呈示を受けた。保証契約の効力はどうなるか。

乙野氏の借入行為を株式会社A社の法律行為として、丙野氏が追認しない以上、貸付契約および保証契約は無効となる。よって、債務者、連帯保証人の資格は貸付実行の都度確認することが望ましいが、2回目以降の保証申込時は省略することもできる。

無権代理行為となる
保証契約の効力は「信用保証書」に記載された保証条件どおりの貸付実行が行われて、はじめて発生する(約定書例2条1項)ものであって、信用保証協会は、その時点で現実に保証債務の負担を負うこととなる。そこで、この乙野氏の借入行為であるが、すでにA社の代表者を辞任しており、一般的にはA社の借入とは認められない(借入金の利用についての問題は残る)。代理権については、民法112条「代理権消滅後の表見代理」、同法113条「無権代理」のいずれの条文適用になるかは説の分かれるところであるが、一般的に金融・保証などを日常の業務としている者については、通常の一般市民に課せられている調査義務より重い法律上の期待があるとみるのが妥当である。

したがって、民法113条の適用と考えて処理することが望ましい。貸付実行前、すでに丙野氏の代表者就任登記が完了しているので、A社として借入金が当時の事業資金に使用されたなど、特殊の事情がない限り、信用保証協会が保証債務を負担することはないと判断すべきであり、貸付担当者としては民法113条の趣旨に則り、乙野氏の行為をA社の行為として、丙野氏より追認を受ける必要があるが、協会と協議のうえ一旦保証申込を取り下げ、最初からやり直すべきである。

修正オペレーションで旧債振替となったがどうしたらよいか

甲銀行の貸付担当者は、A社に保証付融資を期間24ヵ月、貸付利率2.1%、返済方法元利均等のローン方式で、平成22年11月10日に貸付実行した。その後、貸付利率を誤って2.5%で入力していIることがわかったため、11月20日に貸付利率を2.1%に訂正処理したところ、元帳上の表示は11月10日貸付実行分が11月20日貸付分にて回収したようになってしまった。なお、11月20日貸付分は貸付利率2.1%%、最終弁済期日は平成24年11月10日、毎月の内入日も10日となっている。ごの保証契約は有効か。

実際に旧債振替を行ったわけではなく、コンピュータ上の表示がそのようになっているだけなら保証契約は無効とならない。コンピュータ上の表示が単に機械上の技術的操作からのみ発生したものと認められる以上、旧債振替ではない。

事実関係を確認のうえ処理
保証契約の有効性は、「信用保証書」の記載内容と事実関係の合致いかんで判断すべきである。金融機関の取引の量的拡大に伴い、大半の保証付融資もコンピュータ処理されているのが実態である。したがって、金融機関と顧客との間で交わされた元利均等の返済予定表が作成されても、金銭消費貸借契約証書の実体を機械上で作成した表が反映していなければ、それは誤りであって、実態に即した機械上の表に訂正すべきである。

この場合、実際に新規貸付を起こし、それをもって旧債返済した事実がない以上、単なる機械上の操作と記帳の違いだけであって、実態を反映しているものとは認められない。信用保証協会に対して、このような懸念を持たせないため、金融機関は元帳の表示が契約の実態と合致しているような訂正処理をしておくか、検証資料を準備しておく必要がある。内入弁済が開始されたあとの発見は、保証契約どおりの貸付実行であったか判断がむずかしくなり、訂正処理が困難となるおそれもあるので取扱上、十分注意しなければならない。

保証付貸付実行報告書の提出を失念すると保証免責となるか

金融機関の貸付担当者甲野氏は、A社に対する保証付融資を保証条件どおり貸付実行した。同時に信用保証協会宛に貸付実行報告書を送るべきところ、失念してしまった。保証契約はどうなるか。

貸付(割引)実行報告書は、遅滞なく通知することとなっているが、特段の事由がない限り免責とはならない。信用保証協会は金融機関から貸付実行報告書の通知がない限り、現に保証債務を負担した事実を知りえない。したがって、金融機関は貸付実行後遅滞なく、貸付実行報告書の発行を行い、記載事項を記入のうえ通知すべきである。

貸付実行後遅滞なく通知
金融機関と、信用保証協会の約定書例4条1項には、「金融機関は信用保証付貸付実行を行ったときは、遅滞なく信用保証協会に通知するものとする」と規定している。実務では、信用保証決定後一定期間を経過して貸付実行報告書未着のものについては、リストを作成し、金融機関の貸付担当者に「貸付実行の有無」を問合せすると同時に、貸付実行済のものについては、すみやかに貸付実行報告の提出を依頼している(紛失している場合は再発行の依頼をしている)。貸付実行をしていない場合は、保証契約の失効(約定書例2条信用保証書の有効期限経過)となっているものに限り、信用保証書の返却を依頼している。

保証条件どおりの貸付実行が行われなかった場合はどうなるか

A社の保証申込にあたり、保証委託契約轡上の保証人として代表者甲野氏と実質的な経営権を有している乙野氏を徴求することとし、同条件で保証承諾を得た。連帯保証人乙野氏に関しては債権証書上に署名・押印のあることを確認して貸付実行した。この処理に問題はないか。

連帯保証人の意思確認を要する。
保証条件の1つでも不備があれば、実行をとりやめるのは当然の処理である。単に形式的に保証条件を具備すればよいということではなく、連帯保証人乙野氏に対し保証意思確認を行う必要がある。

保証意思の確認を行う必要がある
貸付実行時にはすべての保証条件を具備する必要がある。

(1)保証条件項目
保証条件違反とか、保証条件の具備とかいう場合の「保証条件」ほどのようなものを指すのか。一般的には、信用保証協会が保証決定(承諾)する場合、信用保証書に表示されている保証債務の特定にあたって必要な事項と、保証人、担保のような事項をいう。

(1)保証条件違反のケース
保証条件の不備は条件違反として保証免責の原因となり、貸付実行にあたっては特に注意を払わなけれ.ばならない箇所である。条件違反のケースを例示すると次のとおりとなる。

①貸付条件として保証書記載項目の違反
ア.金額相違(一部貸出、金額超過貸出、手形合併書替)
イ.貸付先相違(住所、名称、人格相違)
ウ.資金使途相違(運転資金と設備資金の相違、旧債振替)
エ.貸付形式相違(手形貸付、証書貸付、手形貸付証書併用)
ただし、債務の同一性があれば追認も可。
オ.貸付期間超過(原則として応当日前日主義)

②保証条件としての条件違反
ア.担保徴求もれ
イ.保証人徴求もれ
ウ.その他の条件違反(前保証の残額完済後貸出取扱条件の違反)

③そめ他の条件違反
ア.債務否認(債務者、連帯保証人、担保提供者)
イ.無断条件変更(担保、保証人、期間、返済方法等)

以上保証条件の1つでも具備しない場合は、免責の対象となるから十分チェックする必要がある。

信用保証書が未着の場合でも貸付実行できるか

A社の運転資金1,000万円を保証委託申込しているが、貸付実行日になっても未だ信用保証書が到着していない。A社から実行を急がされたので協会に保証承諾状況を問い合わせ、取り急ぎ貸付実行した。この取扱いに問題はないか。

保証契約は信用保証書の交付により成立する(約定書例1条)ので、信用保証書が金融機関に到着した後に貸付実行すべきであるが、やむをえず到着前に貸し付ける場合は、電話等により保証日、その他保証条件を十分確認のうえ貸付実行する。

協会宛に保証決定済みであるか否かを問合せ信用保証書が金融機関到着後に貸付実行をしないと、保証契約の効力は発生しない。保証契約の成立していないときに貸付実行しても保証債務が発生しないから、万一事故が発生しても協会に対し代弁請求権はない。保証契約の成立は約定書例1条により、信用保証書の交付によることとなっており、具体的には信用保証書が金融機関に到着したときと定められている。この根拠は、民法97条の隔地者に対する意思表示は相手方に到着したときに効力を生ずるとする到達主義に基づいているためである。

信用保証書が金融機関未到着の場合に、貸付実行する運用面め処理は次のようになる。貸付実行を急がされている場合、電話等により、協会へ保証決定済であるか、その保証日、保証金額、期間、貸付形式、保証人、担保等の保証条件を確認したうえで貸付実行することができる。このような処理を行う場合は、金融機関が貸付実行により保証契約の効力発生に全責任を負わなければならない。後日、保証書が到着してチェックしたら、保証金額の減額、連帯保証人の1名追加等が判明し、結局条件違反となることがあるので、緊急の場合に限って慎重に行わなければならない。

抵当権設定が保証条件の場合、登記前の実行はできるか

A社は事務所に抵当権を設定することを条件に1,000万円の保証承諾を得たが、社長が商用で10日間ほど旅行をするため、その前に貸出の実行をしたいとの申出を受けた。抵当権設定登記前に貸付実行はできるか。また、火災保険の質権設定手続が完了していない状態で貸付実行はできるか。

原則として抵当権設定登記後に貸金を債務者に交付する。
実務上は、登記前貸付実行と登記後貸付実行とがある。貸付契約、抵当権および火災保険の質権設定契約を行い貸付実行し、先方の了解を得たうえで、貸付金は別段預金等に一時留保しておく。抵当権設定登記と火災保険の質権設定手続(確定日付の徴求を含む)完了後、A社の預金口座へ別段預金から振替える等の方法がある。

別段預金に一時留保
(1)登記事項の確認
まず登記された抵当権の内容が、保証条件どおりのものであるかどうかを登記事項証明書により確認する。例えば、物件は相違してないか(規模、構造)、名義人の相違はないか(個人、法人)、担保の順位、さらに権利を阻害する第三者の付着はないか等である。次に火災保険の付保を要する物件については確定日付の徴求まで点検し、担保に取得した不動産が保証条件に一致していることを確認する。

(2)担保権設定登記後、貸付実行する場合
借入資金を使用するまで時間的余裕があるときは、抵当権設定登記が完了した後に貸付実行を行うこととなるが、この場合、貸付契約日と貸付実行日が異なるので、当該貸付契約に基づく借入金である旨を明示した領収証を債務者から徴求しておくといった対応が考えられる。

(3)担保保存義務
貸付実行が保証条件である担保不動産の登記前または登記後に行われようとも、保証条件どおりでかつ遺漏のない担保権を取得した段階で、貸付代り金を解放することに変わりはない。一方、担保不動産について金融機関は善良な管理者として担保保存義務を負うので、これを怠ると保証免責の原因になるから次の点に留意する。

①担保不動産を適正に評価し、万一著しく減価するおそれのある場合は、信用保証協会に連絡して処理する

②支払請求権に質権設定済の火災保険については期日管理を行い、特に倒産後に期日が到来した時には、場合によって金融機関で保険料を立替えても保険を継続しておかなければならない。